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巡る命

ジェイソンの父、つまり私にとっての義父は、ヘビースモーカーで、アル中並みの飲酒量で、高血圧で糖尿病、そしてアルコール性肝炎から肝硬変だった。私にとっては優しい義父で、可愛がられていた。

義父は、体を壊し入院することも多かった。肝臓ガンを患い、入院して、医者から話を聞くことも多かった。

義父が、私が務めていたデイサービスに来ていた事があった。すぐに辞めてしまったが、その時に義母の流産について話を聞いた。つまり、ジェイソンの上に兄がいたのだ。その時、私は四男を妊娠していたので、とにかく気をつけろよ、と、私を気遣ってくれた。

四男を生んで、帰ってきて10日後、私は四男を連れてジェイソンの実家に行った。すると、

痛い、痛い!

床をのたうちまわる義父と、その横で新聞を読んでいる義母がいた。どうしたのか聞くと、朝から痛がっているとのこと。きっと普段からこんな感じなのだろう。でもその痛がり方は尋常ではなかった。明らかに今までとは違うものだろうと察しがついた。私は、四男を義父の胸の上に置き、

じいじ、ほら、生まれたんだよ!ほら、しっかり見て!

と大声で呼びかけた。義父は、目をしっかり開け、四男をじっと一瞬見て、うんうんと頷いた。よし、大丈夫だ、と判断した私は、四男をソファに置き、義母に病院へ連れて行くよ、と告げ、手を貸すように指示した。その時には、救急車という頭はどこにもなかった。私が連れて行かなくちゃという思いしかなかった。ジェイソンに連絡を取り、病院へ来るよう話した。ジェイソンは一度も医師の話を聞きに行ったことはなく、義父とも仲がいいようには思えなかった。それと同様に義母とも仲良くはなかったように見えた。私にはよくわからない親子関係だった。ジェイソンには、3歳下に弟がいるのだが、こことも仲良くはなさそうだった。そのことが私にはよくわからなった。我が家は非常に仲の良い家族だったからだ。


病院にやっとの思いで義父を運び込み、状況を看護師に伝えた。しかし、新生児を抱いた私は、義父のそばには行けなかった。ジェイソンが現場から駆け付け、義父に

痛いのか?苦しいのか?

と声をかけると、義父は苦しそうにただ顔をゆがめ頷いた。私は、看護師の勘からそれほど長くはないことを感じた。


入院後5日目の朝、病院からの電話が来た。急変したのですぐに病院へお越しください。みんなで駆け付けると、そこには、個室で心電図がフラットの状態で義父が横たわっていた。しかもたった一人で。誰もそばにはいなかった。

急変ていうか、死んでるじゃん

とジェイソンがつぶやいた。きっと、何か最後に言いたいことがあったのだろう。だけど、遅かった。義父はこうして、私の四男が生まれた2週間後、息を引き取った。


その晩、私が夜中に気配を感じてうっすら目を開けた。すると、首からタオルをかけた男の人が、隣で寝ている四男をのぞき込んでいた。顔はよく見えなかったが、その風貌は義父そのものだった。いつだって首にタオルをかけていた義父。会いに来てくれたんだね、と、うろ覚えに思いながら、私は、安心感に包まれまた眠りについた。そのことを翌日義母に伝えると、義母とジェイソンは泣いていた。ああこの家族はこの家族なりの形で、ちゃんと家族になっていたんだね、と少しほっとしたのである。

義父の葬儀は多くの仲間や仕事関係者が参列してくれて、盛大に行われた。産後2週間後での、義父の葬儀では、私は長男の嫁として前に立ち、参列者に頭を下げた。そこに、私の祖母が母とともに参列してくれていた。1年前に祖父を失い、その後、遺産相続で親せきが揉め、祖母はがりがりに痩せていた。大変だったね、と私に声をかけてくれたが、よっぽど祖母の方が大変そうだった。祖母は心臓病があり、心不全の状態で列席してくれたのである。


義父が亡くなってから2か月後、その祖母が亡くなった。心不全が悪化し、呼吸困難が出現し、実家に呼ばれた私は救急車を手配しようとしたが、祖母はそれを好まなかった。近所のことも考慮し、私と母で連れて行ってほしいとの希望だった。私は、時間外救急で祖母の容態を説明し、集中室へ緊急入院となった。そしてあっという間に祖母は亡くなった。


実はこの年、私の弟のところに第一子である娘が誕生するはずだった。しかし、陣痛がきている間にベビーの心臓は止まり、死産だった。出産と同様にベビーは死んだまま出され、ベビーの姿かたちのまま、死んでいた。母だけが葬儀に出席し、ベビーと対面した。写真を後から見せてもらったが、その悲しみは計り知れず、泣いても嘆いても何の解決にならなかった。その数か月後、私の妹が第二子となる男の子を出産した。そして私が四男を出産し、義父が亡くなり、祖母が亡くなった。5つの命が巡ったのである。でもその前から、父が亡くなり、叔母が亡くなり、次男が生まれ三男が生まれ・・・こうして命は果てしなく巡るのだ。生きている人間が、これをどのように受け止めるかによって、生き切った命は輝きを増し、生まれてきた命は尊ばれる。

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